子宮のお悩み・子宮頸がんワクチン

子宮について

子宮は、女性の身体の中でもとても大切な臓器のひとつです。

しかし、子宮にはさまざまな病気やトラブルが起こることがあります。

子宮の病気

子宮筋腫

子宮の筋肉の層(平滑筋)にできる良性の腫瘍で、およそ4人に1人の女性が持っているとされ、近年は20代の女性にも増えています。主な症状には月経量の増加や経血の長引き、月経痛、貧血のほか、頻尿や下腹部の張り、便秘、不妊や流産の原因になる場合もあります。症状がない場合は経過観察が一般的で、治療が必要とは限りませんが、筋腫の大きさや症状の程度によっては治療が求められます。
治療法としては、筋腫の大きさや数、患者さまの年齢や妊娠希望の有無を踏まえ、子宮全摘出や筋腫摘出の手術を検討します。またホルモン療法による月経量や月経痛の緩和、さらに鎮痛剤や貧血治療などの対症療法も行います。子宮筋腫は閉経とともに自然に小さくなることが多いため、閉経までどう付き合うかを重視した治療方針を一緒に考えていきます。

子宮内膜症

本来子宮内側にあるべき内膜組織が卵巣や腹腔内など子宮以外の場所に発生する病気で、月経のある女性に広く見られます。症状としては激しい月経痛(いわゆる月経困難症)や月経期間以外の骨盤痛、腰痛、下腹部痛、性交痛、月経期間の延長、不妊症などが挙げられます。自覚症状がまったくない場合もあり、検診で偶然見つかることも少なくありません。
治療には低用量ピルや黄体ホルモン製剤、GnRHアナログなどのホルモン療法を用いて月経をコントロールし、内膜の活動を抑制します。鎮痛剤は対症療法として利用され、病変が広範囲で妊娠を希望する場合は手術を検討します。症状の程度や進行具合、年齢、妊娠希望の有無などを踏まえ、患者さま一人ひとりに適切な治療方針を相談しながら決定していきます。

子宮頸がん

子宮の入り口(頸部)にできるがんで、近年は20~30代の若い女性にも増加傾向があります。主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染で、初期には自覚症状がほとんどなく進行すると不正出血や性交痛が現れることがあります。
重要なのは前がん病変である子宮頸部異形成(CIN)の段階で発見することで、定期的な子宮頸がん検診により早期発見・早期治療が可能です。治療法は円錐切除術、手術、放射線治療などから選択されます。また、HPVワクチンの接種も予防に有効です。詳しくはご相談ください。

子宮体がん

子宮内膜(体部)に発生するがんで、子宮頸がんとは異なる疾患です。閉経前後の女性に多く、不正出血が主な症状として現れます。月経以外の出血、特に閉経後に出血がある場合は注意が必要です。
治療は前がん病変である子宮内膜異型増殖症の段階で開始することが望ましく、早期であれば手術が中心となります。状況によってはホルモン療法や放射線治療、抗がん剤治療が行われることもあります。

定期的な検診が大切です

子宮の病気の中には、初期には症状が出にくいものも多くあります。
「月経がいつもと違う」
「おりものが増えた」
「何となく下腹部に違和感がある」
など、ちょっとした変化も、実は大切なサインかもしれません。不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

子宮頸がんワクチンとは

子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交経験のある女性の多くが一度は感染するとされるほど、ありふれたウイルスです。その中でも特に発がん性の高い「ハイリスク型HPV」による持続感染が、子宮頸がんの主な発症要因となります。

HPVは感染しても自覚症状がないことが多く、自然に排除される場合もありますが、ウイルスが長期間体内に残ると、がんへと進行することがあります。これを予防するための手段が「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」です。

子宮頸がんワクチンの効果

子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐことで、子宮頸がんの発症を約70~90%以上予防できるとされています(ワクチンの種類によります)。また、尖圭コンジローマなどほかのHPV関連疾患の予防にも効果があります。
接種は通常3回(半年以内)必要です。

接種のタイミングと重要性

HPVワクチンは、10代のうち(特に性行為未経験の時期)に接種することが最も効果的とされています。感染する前に予防することが何より大切です。
また、自費で接種する場合、3回の接種で約10万円前後の費用がかかるため、公費で受けられる年齢のうちに、ぜひ接種を検討していただきたいと思います。

キャッチアップ接種について(※制度は終了)

かつて日本では、一時的にHPVワクチンの積極的勧奨が中止されていた時期があり、接種の機会を逃した1997年~2006年度生まれの方を対象に、「キャッチアップ接種」(公費での再接種)が行われていました。この制度は2025年3月で終了しましたが、対象年齢を過ぎてしまった方でも、接種を受ける意義は十分にあります。年齢や性経験の有無に関わらず、まずは一度ご相談ください。

未来を守るワクチンです

子宮頸がんは、定期的な検診とワクチン接種で予防ができる数少ないがんです。
にもかかわらず、日本ではいまだに毎年1万人以上の女性が子宮頸がんを発症し、約3,000人が命を落としています。「大切な人を守ること」「将来の妊娠や出産を守ること」につながるこのワクチン。啓発と正しい理解が、未来を変える力になります。
ご相談だけでも大歓迎ですので、不安や疑問があれば、どうぞお気軽にお声がけください。